月の文学館
- 作者: 和田博文
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/07/06
- メディア: 文庫
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月をテーマにした小説、エッセイ、詩のアンソロジー。
ちくま文庫のこのシリーズは他に星、猫あり。
43篇ありますが好きなもの、印象に残ったものについて。
稲垣足穂「月光密輸入」
お月さまといえばやっぱり稲垣足穂。
月光密輸入、っていう言葉の響きが良すぎてノックアウト。
山川方夫「月とコンパクト」
謎めいた展開の物語と、死の気配と感傷を感じさせる雰囲気が良く。
中井英夫「殺人者の憩いの家」
月光療法、地下室のワインセラー、高原療養所という名目の、法の手を逃れた殺人者を収容する施設。「月蝕領主」に成り代わる欲望に駆られた小説家…。
キーワード過多で眩暈がしそうに耽美な、ミステリ風味の短編。中井英夫は「虚無への供物」しか読んだことがなかったけど、他のも読んでみたいな。
金井美恵子「月」
これは既読だったんですが、好きな短編。
現在と過去、生者と死者、現実と記憶が曖昧にオーバーラップして反復する、「これは現実なのか、記憶の中で見た風景なのか?」という夢の中みたいな感覚を、美しい言葉で固めたおはなし。
安部公房「月に飛んだノミの話」
「全国害虫協議会」に居合わせることになってしまった主人公が語り手。冷戦下の米ソ宇宙開発競争のさなか1959年発表の、知的ユーモア短編。ロマンと皮肉を感じる。