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星か獣になる季節

  

星か獣になる季節 (単行本)

星か獣になる季節 (単行本)

 

 最近のばたばたが少し落ち着いて,やっと本が読めそう。

詩人,最果タヒさんの描いた青春小説です。

昔,たぶん私がまだ大学生だった頃,最果タヒさんの詩を初めて読んだとき,その圧倒的な同世代感にある種の衝撃を受けたものでした。実際,同じ1986年生まれのようなのですが,たぶんそういうことだけでなくて。それから,私にとってはずっと気になる作家の一人です。

現代詩は別にして小説の枠で言うと,最果さんの作品は,年刊日本SF傑作選「量子回廊」に収録されていた「スパークした」しか読んでいません。その作品は確かもっと,あえて言ってみれば純文学寄りの,というかそれこそ長い現代詩みたいな感じの,短編だったと思う。

そこから行くと「星か獣になる季節」は,文体は変則的な書簡体だけど,ずいぶん読みやすくなって,ある意味ストレートど直球な,わかりやすい青春小説で,それも地下アイドルとかクラスメイトは連続殺人犯とか,キャッチーな要素満載なんです。

しかしながら,ここで描かれていることは,本当は連続殺人が起きなくたっていいんです,たぶん学生だった人はみんな知っている,こういう,みんなに好かれるいいやつ(本当にいいやつかは知らない)とか,執着のバランスがおかしい人間関係とか,それから,青春が軽蔑の季節だっていうこと。みんな知ってるはずで。エピローグのような書き下ろし短編の「正しさの季節」も,切ない。