suisei in my head

夜になっても遊びつづけろ

アンダー・ザ・シルバーレイク


『イット・フォローズ』監督の新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』日本版予告編

(ネタバレ感想)

 

同監督の「イット・フォローズ」が面白く、また予告が気になったので観てきました。アンダー・ザ・シルバーレイク

まったくシネフィルではなく、どっちかというと読書クラスタな私が観た感想は、デヴィッド・リンチヒッチコックよりも、トマス・ピンチョン的なパラノイアアメリカ社会の映像化!

さて、「彼だけが世界の秘密に気付いてしまった」のか、それとも彼は狂人なのか?

ストーリーは現実と虚構と妄想がないまぜになっていて、どこからが夢なのか、いやいやすべて現実なのか?曖昧なつくりになってます。

記号、暗号、サブリミナル。人々が意味がないと思って見過ごしているものにはすべて意味があるかも…っていうパラノイア的白昼夢。

メディア・セックス (集英社文庫)

メディア・セックス (集英社文庫)

 

金持ちのパーティーシーンの刹那的な華やかさ、LAの夢やぶれた若者たちの気怠いのにポップな感じ好きだな。バルーンガールがかわいい!

 映画、音楽、ゲームなどのポップカルチャーを端々に引用しながら、ソング・ライターのお爺ちゃんに君の青春の曲は実はすべて私が作ったと言わせポップカルチャーを破壊するのも、そのお爺ちゃんをサムがカート・コバーンムスタングでぶん殴って殺すのも、とっても露悪的ですネ。

サムは車に悪戯した子どもをぶん殴り、ソング・ライターをギターで撲殺し、イエスをトイレでぶん殴り、ちゃっかりセックスは誰とでもするし、主人公だけど、直情的すぎてヒーローたりえる人物には描かれてないんだよね。(暴力シーンは夢にも見える描き方だけど、でもどちらにせよサムの本質、深層心理というか。)

夢やぶれて、「あるべき人生の失敗篇を生きてる」と思ってるサム。

謎解きの過程はちゃんとゲームっぽい冒険譚のつくりにもなっていて、でもこのゲームをクリアしてしまった後、画面越しにやっと会えたサラは向こうの世界で生きるという。

そして現実に戻ってきた後のエンディングが、、、

モラトリアムの終わり、という感じ。

大人のなり損ないみたいな30代の無職の男が、手のひらに残ってた青春や夢や叶わなかった恋の残り滓みたいなものすら失う話。モラトリアムはもうおしまい。現実逃避のゲームはクリアしてしまったし、叶わなかった恋(サラも、ハリウッドで成功した元彼女も。)は手の届かない所に行ってしまった。

エンディングのサムは、成長したようにも見えなかったし、心機一転夢に向かって頑張って、仕事して家賃払うようになるようにもおよそ見えず。

サムの部屋の「静かにしていろ」のマークのとおり、諦念の中でただ静かにしてる大人になった。劇中ずっと追う者/追われる者であったサムは、もう何かを追う者でも何かから追われる者でもなくなり、静かに。っていうバッドエンドに思った。ちょっとメリーバッドエンド。