suisei in my head

夜になっても遊びつづけろ

ハーフウェイ・ハウスの殺人

(ネタバレ感想)

アヤコ視点の「ハーフウェイ・ハウスの殺人」と健一視点の「ふたりの果て」の2つの物語が交互に進みます。

外界から隔絶された森の中の学園で管理される子供たち、という舞台設定がカズオイシグロの「わたしを離さないで」みたいでわくわくして惹かれたのですが。

2つのパートが最終的にどのように交差するのか?と思わせて、結末は…交差しない、平行線。というのが種明かし。

叙述トリック系のミステリを読み慣れた読者だと、このように2つのパートが交互に進むミステリを読むときにまず疑うのは、「2つのパートで同一人物に見える登場人物が、実は同一人物ではない」「2つのパートの時系列が同じに見えて、時代、又は日にちがずれている」「一方が一方の小説内小説である」あたりだと思いますが、なんとこの小説ではこのすべてが駆使されています。笑

それぞれのパートが相互に別パートの語り手が書いた小説というメタミステリになってるんだけど、健一がアヤコパートを書くのはともかく、アヤコが健一パートを書くのは知識的に無理がありそうな…。

2つのパートそれぞれに、きちんと真相の種明かしとオチがあり。結末はどっちもあまり衝撃はないけど、そこに至るまでの部分が先が気になる感じで読み応えがあります。

アヤコの身体的状態は序盤から伏線が多くあまり隠す気もない感じですが、結末はアガサ・クリスティーリスペクトの正統探偵小説とSFのハイブリッド。「胡蝶の夢」「水槽の脳」がサブテーマ?

健一パートの結末は、一転、俗世じみたもので、ハウスの正体がこちらでは非常に呆気ないものというパラレル感を楽しめます。健一の人間性がクソすぎて、胸糞ミステリでもあります。笑