suisei in my head

夜になっても遊びつづけろ

イット・フォローズ

(ネタバレ含む)

Amazonプライム・ビデオにて。

「それ」は歩いてついてくる。「それ」に捕まったら死ぬ。「それ」は性行為で他の人に移る。移された人が死んだら、その前の人に「それ」は戻ってくる。「それ」の姿はまちまちで、知人の姿のときもあれば、まったく知らない人の姿のときもある。

セックスで呪いが移るという、バカバカしい都市伝説のような設定のホラー映画なんだけど、不思議と繊細なつくりの映画です。

デトロイト郊外のがらんとした風景に憂鬱なティーンエイジャーたち。メランコリックな雰囲気と映像が美しく、ヒロインのマイカ・モンローがめっちゃ美人だけど脆さを湛えていていい感じ。

ホラーとして怖いかというと、あんまり派手な怖さはないんだけど、画面の奥から歩いてくる通行人が「それ」なのか?そうじゃないのか?気になって観客も常に背景を凝視してしまう、新しいタイプの怖さ。

「それ」が何なのかということについて、映画の中で多くは語られない。結末も曖昧に終わる。

ヒロインの友達が、意味ありげにドストエフスキーの「白痴」を朗読する。最悪の苦痛は、肉体的な痛みよりも、死が迫っていることへの恐れ、死が避けがたいことだと知ること、という意の一節。

ジェイとポールが、手をつないで歩いている。後ろには、ついてきている誰かが見える。二人は後ろを振り向かない。幕。

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は、「私たちは誰もが、やがて死ぬ運命からは逃れられないけれど、愛とセックスは、一時的にでも死を遠ざけることができる方法」というようなことを言ってます。

死への根源的不安を表象したものが「それ」、という感じでしょうか。